金属を切削する加工において従来より切削油を使用されていました。油性切削油が主流であったものが、最近では機械の自動化や高速化に伴い加工法が大流量で高圧のクーラントシステムに移行し火災の危険性から切削油も油性から水溶性のものが多くなってきています。
切削油をかける目的は潤滑、冷却、切屑排出が主な目的で工具磨耗の抑制、面粗度の向上、加工能率のアップに貢献しています。
従って切削油を大量にかつ高圧かけることが効果的であり最新のマシニングセンターなどには高圧クーラントシステムが多く採用されています。
しかし企業の環境問題の高まりから大量の切削油の使用が問題視されセミドライ加工が注目されるようになってきました。
セミドライ加工とは従来の切削油の代わりに植物性由来のエステルを主体とした加工油を5〜20CC/1hという極微量の霧状にして圧縮エアーとともに給油する方法でMQL(Minimal Quantity Lubrication)最小量潤滑と呼ばれる加工法です。メリット、デメリットは下記の通りです。
セミドライ加工のメリット
1 ほとんど材料の加工部分しか加工油がかからない、また付着しても極微量のため脱脂の必要がありません。
2 セミドライ加工用の加工油は全損式ですが消費量は極微量のため切削油にかかるトータルコストは軽減できます。
3 水溶性切削油の問題点である腐敗、塗装剥離、濃度管理等の問題はありません。
4 更油作業の問題はありません。
5 廃油が出ないため廃油処理コストがなくなります。(ゼロエミッションに貢献できます。)
6 大きなタンクやクーラント装置等の設備が必要ありません。
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大きなエネルギーが必要なクーラント装置が不要なことから大きな節電効果があります。
8 セミドライ加工専用油の多くは植物性由来のため企業の環境問題への取り組みコストが軽減されます。
9 セミドライ加工専用油の多くは高引火点であり、極微量の使用量のため消防法の指定数量の管理が楽になります。
セミドライ加工のデメリット
1 工具寿命や面粗度の課題があります。
2 水溶性切削油使用のクーラントシステムに比べ冷却性が劣ります。供給ノズルの数、方法の検討が重要です。
3 流量が少ないため切屑の排出に問題があります。
4 材料の熱変位の課題があります。
5 加工方法のよっては使用が難しい場合もあります。また汎用工具では対応が難しい、または専用工具が必要の場合があります。
現在ではTiコーティングやダイヤモンドコーティング、切屑排出の改良した専用工具などが開発され従来の切削油を使用した加工と同等の実績が出てきました。
しかし将来有望な加工法なるだろうとは考えられますがまだまだ課題も多く、すぐには切削加工の全てをセミドライに移行するのは難しいと思います。
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