倍率と濃度
水を媒体として使用する液体、いわゆる水溶性の液体を使用する場合は水との割合が最も重要である。
まして水溶性切削油のように継続的に使用するものとなると、使用濃度と補給濃度のバランスが必要となり、その管理が難しくなる。
ここでは水溶性切削油の濃さに関する表現とその意味について説明する。
1. 倍率と濃度
水溶性切削油の濃さを示す表現に<倍率>と<濃度>という言葉がある。
@倍率とは油剤 1に対して何倍の水を入れるかを示す数値で(油剤:水=1:9)で10倍 となる。この場合数値が大きくなる程水溶液は薄くなる。
A濃度とは水溶液にどの位油剤が溶け込んでいるかを示す数値で、パーセントで表示 される。この場合数値が大きくなる程水溶液は濃くなる。
このことから、倍率と濃度同じことを意味しているが数値上反比例の関係となる。
2. 表示単位
水溶性切削油のカタログ等には、一般的に「〇〇倍に希釈して下さい」と書かれている が、こらは前文に書いた<倍率>のことなので、測定器具などは必要としない。
例えば、200Lのタンクに20倍の切削液を作るとなると、(20倍÷200L=10L)となり、水 190Lに対し油剤10Lを投入する。
これは新規に切削液を作る段階では問題ないが、すでに希釈され水溶液の濃さを確認 するには測定器具が必要となり測定器具で表示される数値はぱーせんとすなわち<濃 度>でである。
濃度を現場サイドで測定する際に、最も簡単でポピュラーな器具として屈折率を利用し た濃度計が多く使われている。プリズム上で数滴のサンプルを垂らすだけで簡単に確 認することができる。
3. 2種類のパーセント
@水溶性切削油油の原液には、必要成分として<水分>が含有しているものがある。
前項に記した簡易濃度計は屈折率を利用した測定方法なので成分として使われてい る。
水分も希釈用の水分と同様に測定値に表れない。
水分を含有しない原液で10倍希釈液を作ると10%として表示される。
どちらも10倍には変わりないが、濃度計の差異が表れる。
不揮発分しか測定できない器具の数値をブリックスパーセント(Brix%)という。
A実値で%で倍率に換算することが一番正確だが、原液に引火点をもたないため水分 を含んだ油剤が多くなり、また現場サイドでは緻密な測定方法は不向きなためBrix% から直接倍率を換算できるグラフが管理上必要となる。
水溶性切削油剤は濃度係数を持っており、その係数を用いた計算式により算出する。
倍率=100/Brix%×係数 濃度係数は水分を含有していない原液が1 で水分含有量が多くなると数値も大きくなる |
例
倍率 |
10 |
20 |
30 |
40 |
50 |
60 |
70 |
80 |
90 |
100 |
係数1Brix% |
10.00 |
5.00 |
3.33 |
2.50 |
2.00 |
1.66 |
1.42 |
1.25 |
1.11 |
1.00 |
係数2Brix% |
5.00 |
2.50 |
1.66 |
1.22 |
1.00 |
0.83 |
0.71 |
0.62 |
0.55 |
0.50 |
水溶性液体個々の濃度係数を把握し、前もって換算表もしくは換算グラフを用いた濃 度管理をしなければ必要以上に濃くしたりまた限界ギリギリの薄さで使用するリスクも 回避できる。
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