水溶性切削油の希釈の仕方と希釈用水の性状について
水溶性切削油は、水に希釈して使用します。この希釈液を通常クーラントと称していますが、クーラントは、使い方を誤るとすぐに劣化し、腐敗臭の発生、液の分離、さびの発生、切削性の低下など、いろいろな問題が生じます。これらの問題を防ぐためにはクーラントの正しい使い方が必要となります。ここでは、
1.水溶性切削油の希釈の仕方
2.希釈用水の性状
について述べます。 |
1.水溶性切削油の希釈の仕方
水溶性切削油を希釈する際の注意事項として次の事柄があります。
(1)水を入れてから原液を入れる
希釈水の中に原液を投入する。
逆にするとゲル化して溶解困難になる。
図1
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(2)速やかに撹拌し、均一にする
原液を投入したら必ず攪拌する。
比重が1以上の原液は水に沈むので徐々に投入する。
図2
(3)推奨濃度を守る。
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(1)および(2)項はエマルション、マイクロエマルションを使用する場合には、十分に注意しなければなりません。油剤には被乳化体(水に溶けない成分)が多量に含まれていますので、希釈手順を誤ったり、原液を投入後速やかに撹拌が行われなかった場合、安定なエマルションが形成されず、分離・乳化不良などの不具合を生じることがあるからです。したがって、新液チャージあるいは補給をする場合は、クーラントポンプなどであらかじめ液を循環し、流動の激しい所に原液を投入するとともに、均一になるまで十分に撹拌する必要があります。(3)項はすべてのすべてのクーラントに共通する事柄です。クーラントの有効成分は僅か数%であり、この微量の成分で潤滑作用を発揮させるとともに腐敗や発錆を抑制しなければなりませんので、推奨の濃度を守り、これを維持することが肝要です。推奨濃度以下のクーラントは、満足な性能が得られないばかりか、トラブルを作っていると言えます。 |
2.希釈用水
クーラントは大部分が希釈水であり、その水質の良否がクーラントの寿命や性能に大きな影響を与えます。希釈用水として好ましい水質の範囲を図3に示します。
図3 希釈水の性状
リン酸イオン、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオンおよび生菌数については、「良」の範囲内でも値が小さい程、希釈水に適しています。図の「良」に範囲に入らない場合の調整として図中に示した対策法があります。なお、現状においては硬度以外の水質改善は行われていませんが、ランニングコスト低減や環境問題への対応などから、より一層の長寿命化を要求するならば、油剤の改良ばかりでなく、希釈水の改善も必要になるでしょう。 |